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「空気を読め」の「空気」って何?『「空気」の研究』を読んでみた

2015/03/10 | A to Z

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

この本のまとめ

・「空気を読め」の「空気」について研究
・「空気」には圧力があり、なかなか圧力から逃れられない
・人間以外の動物や物質に対して感情移入するなどの、日本人特有のものの考え方を説明

 

日本の政治史上最大の過ちは、勝ち目がないとわかっていたアジア太平洋戦争を開始して日本人や外国人をたくさん死なせてしまったことです。当時戦争を開始することを決めた人たちに話を聞くと「その場の空気でそうせざるを得なかった」といったような答えが多く返ってきたとのことです。よく「空気を読め」などと言ったりもしますが、多くの人の生命をも左右する「空気」とはいったいどういうものなのでしょうか。そのことについて研究したのがこの本です。

「空気」というものがたしかに「ある」のだから、そういう非科学的なものは「ないこと」にするのが科学的だ、といって「ないこと」にしてしまうと、かえって歯止めが利かなくなって戦争のときのように悲惨なことにもなりかねない、とこの本の著者は主張しています。

冬場、ヒヨコに良かれと思ってお湯を飲ませてヒヨコを皆殺しにしてしまった人の話や、日本人とユダヤ人が毎日のように人の骨を運んでいたら、日本人だけが精神的に病んでしまった話など、興味深い話を紹介しながら、日本人特有のものの考え方を説明しています。

「空気」の背景には宗教的な要因があり、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒といった唯一の絶対的な神を信じている人が大勢を占めるような国では「空気」が絶対的な逆らえないものにはならない、とこの本の著者は説明しています。戦前の天皇制は「空気支配」の体制であるとも言っています。ただし、「空気の支配」が発生すると多数決がうまく機能しなくなるということなので、戦後、民主主義国家になった日本でも「空気」の問題からは逃れられないようです。

「空気」の次は「水」を研究しています。「水を差す」というときの「水」です。最後のほうになると、人はどんなに言葉で論理的に説得されても自分の行動を変えないが、一度大きな出来事を実際に経験すると行動を変えることが指摘されています。「百聞は一見に如かず」ということです。

これまでの社会システムがうまくいかなくなってきた今こそ、先入観にとらわれず「空気」を読まない「自由」な発想が大切だ、ということをこの本は教えてくれます。ただし、「水を差す自由」がないと世の中は大変なことになりますが、「水を差す」ことは結局新たな「空気」の支配をもたらすにすぎないのだそうです。この本を読んで「空気」について知ることが、「空気」の支配から逃れるための第一歩なのです。

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